たった5分の出会い（大阪気功）

今日、おおさか東線を　大阪天満宮駅に向かって行っていましたら、

一人の女性が乗ってこられました。

 

そのとき、私は　仕事に行くまでのテキトーな恰好をしていまして、（仕事場で着替える、みたいな）

 

どちらかといいますと、「誰も　来ないで」オーラを出していたと思います。

 

（どちらかと申しますと、避けられるような雰囲気でした）

 

しかし、

その女性は、狭い私の右隣のすきまに、乗ってこられたのでした。

 

「よいしょ！

お尻は大きいけど、入れましたよ」

 

（その隙間は狭かったので、

普通は、どなたも座られないかな、と思えるすきまだったのです）

 

私は、その女性のほうを向きました。

 

70代かと思われました。白髪で、でも、どことなく上品さがありました。

 

「・・・どちらまで　行かれるんですか？」

 

めったに話しかけないんですが、そう申しました。

 

「京橋まで。

今日は、暑いですね」

 

「あの、すみません、あなたは・・・

 

お茶かお花の先生をされてますか？」

 

「はい、お茶も、お花も、教えてましたよ。

絵も、ね」

 

「絵も、ですか・・」

 

「はい。」

 

たたずまいが、どことなく、「先生なのかな？」と思わせる人、だったのです。

 

「私、絵は　ＮＨＫの講座の先生のところに行っていたんですが、

今はやめてます。

 

習いに行ってもいいですか？」

と、

とっさに申しました。

 

「絵は・・・」

 

と　その女性は、正面の座席を指し、

 

「この目の前の情景を、どんなふうに　とらえるか、ということなのです。

 

座っている人々の洋服や、バッグ、靴の色・・

 

それを、どう描くか、ということなのです」

 

「はい」

 

「あなたは、絵の会に　入られたいのですか？それとも、

自分で描きたいのですか？」

 

「入りたいですよ」

 

「絵はね・・

 

会に入ったとたんに、派閥になるんですよ。

 

自分が描こうと思ったことと、ずれてきます」

 

「え？」

 

「自分で、描きなさい。

好きなように。

描きたいように。

それが、絵、なんです」

 

「先生・・」

 

「私は、これから、京橋の眼科に入院するんです。

右の目が、見えなくなりましてね」

 

「先生、お大事にされてください」

 

「ありがとうございます。

あなたに出会えて、

いいご縁を　いただきました」

 

 

思わず、私は、その先生の手をとりました。

 

この人は、前世のどこかで、確実に、私の師匠であった、

と　思えました。

 

「自分の、思うように描きなさい」

 

もう一度、それだけ　言われて、電車を降りて行かれました。

 

たった、5分間の、出会いでありました。

 

ですが、私は、「この出会いを一生忘れたくない」、と思ったのでした。

 

 

大阪天満宮駅に降りるまで、

涙でいっぱいになった瞳を

ふりぬぐって

電車を降り、

仕事場に向かったのでした。

 

 

 

大阪気功　太田マスミ